木曽ツーリングの2日目は、木曽駒ヶ岳である。
ガイドマップを見ると、途中までロープウェイがついていて、 そこから歩いて1時間半くらいで頂上に着けるということだったので、 気軽に登ろうと思っていた。
しかし、木曽駒を目の前にして、雪がどっさり積もっているのを見て、「ほんまに登れるんかいな」と思ってしまった。
なんか、しまったなー、って感じ。
木曽駒に向けて単車を走らせていたのであるが、また難敵出現。一般車通行止! 木曽駒の麓には、まだまだ距離があるのに、ここで通行止め食らっちゃったらぜんぜんダメじゃん。 近くにいた地元の人に聞いてみたら、バスで行くしかないのではないかという ことだった。
ちょうど、近くにおみやげ屋さん兼観光案内所みたいなのがあったので、 そこで訊いた。バスは、その案内所の前から発車していて、もうすぐ次の便がくるだろうとのこと。
バスと、ロープウェイのセット券で、往復 3600 円だった。 これくらいの値段だったら、高くないなと思い、バスで行くことにした。
単車は、案内所の前に停めて行ってもよいそうだ。
バスはちょっと遅れぎみにやってきた。座席はほぼいっぱいである。 このバスは駒ヶ根の駅からやってくるものなのである。
おれを乗せたバスは、山道を走り出した。 バスの乗客は、登山の恰好をした人や、スキーを持った人もいる。 運転手が、ガイドをしながら狭い道を登ってゆく。
60歳くらいの運転手で、ガイドのうまさもさることながら、運転がうまい。 ちょっと間違えれば、谷に転落してしまうような道なのであるが、運転がうまいので、不安を感じない。 ノロノロというわけではないのだ。 ツボをおさえて走るという印象で、速くて安全、そんな感じ。
ロープウェイの駅に到着した。もっとずっと乗っていたいと思った。 ここまでは、道路に雪が残っているようなことはなかったのだが、駅から上には雪がいっぱいである。 こんなに雪深いところを、この季節にどんどん登れてしまうのだから、 ロープウェイ、エライ!
しばらく列に並んで、ロープウェイの到着を待つ。 スキーを担いで並んでいるひともいる。
ロープウェイは、けっこう大きくて、30人くらい乗れたかな。 スピードも、かなり速い。 出発してすぐに、雪一色になる。太陽が反射してまぶしい。
ロープウェイは、輝く雪面に近付いたり遠ざかったりしながら、 頂上駅に向かって進んでゆく。 頂上駅に到着。駅舎から外に出たら、白しろ白まっしろ!
空は青。 岩肌が露出しているところもあって、そこは黒いのだけど、でも、青と白、 それしかないって感じ。太陽が雪に反射してまぶしくて目が開けていられない。
小屋の近くにスキー場。 リフトなんかないのだけど、長いロープみたいなのを輪にして、 それをリフト代わりにして登るみたい。 ロープにつかまれば、引っ張りあげてくれるの。
チキショー。いいなあ!! またいつかスキーしに来よっと!
一方、登山をしている人もいる。雪の斜面を、登ってゆく人が見える。 夏には1時間半でのぼれてしまう道のりも、雪のうえではどれくらいかかることやら。頂上は見えているのに…。 特殊な靴がないと登れそうもなさそう。 おれは、頂上まで登れなくて残念とは思わなかった。
千畳敷カール (ロープウェイの頂上駅) の景色は、 想像をはるかに超える素晴らしさ。 心の中で叫びまくっていました。 こんな夢のような場所が、鉄道の駅から往復3時間くらいのところにあるなんて、ほんとうに信じられない。
千畳敷カールでは、絵はがきを買って、地上の友人にメールを書く。 もちろん、スタンプも忘れずに! (ここには郵便局もポストもありませんでしたので、地上に下りてから投函だ)。
メールを書いて、また外に出る。またまぶしくて目が痛い。 遠くに富士が見えた。かすみのなかに、ぼんやりと見える。
よし、今年の夏は富士に登ってやるぜー。決めたぞ。
千畳敷カールには1時間近くもいただろうか。 下りてしまうのがもったいないのだ。 また来ようと決めて、下山。
下りのロープウェイは、さみしい。頂上駅がどんどん小さくなってゆく。 展望がどんどん狭くなってゆく。
帰りのバスはもっとさみしい。 下りの運転手は、若い運転手だ。谷に落ちそうで怖い。 登りのときの運転手に来てほしいと思う。
どんどん現実に引き戻されてゆく。
案内所まで戻ってきて、その隣のそば屋で昼食。 山菜とろろそば、うーん、おいしい。
単車にもどって出発の準備をしていると、 単車が何台か山の方面に走ってゆくのが見える。 関西から来ている単車もある。 彼らのほとんどは、しばらくして通行止の案内を見て、引き返してしまっているようだ。
むりやり止めてでも、バスに乗り換えて木曽駒に登ってくるんだっ! と教えてあげたい気持ち。 彼らはそのまま帰ってしまったみたいでした…。
駒ヶ根から中沢峠方面に向かう。 交通量が少ないし、道は適度に曲がっているので、ほんと楽しい。
Bandit 400V 買ったばっかりなので、峠も走り慣れていないのだが、 いきなり攻め込めてしまうところがいい (のか悪いのか…)。
誰でも速く走れてしまう、という印象。
おれはやっぱりコントロールの難しい NSR で攻めて、 バッチリ決まるときの喜びのほうが上だ。 コントロールを誤って、めっちゃ遅くなって恥ずかしいこともしばしばだが、そういうのがあるから楽しいと思うのだ。 中沢峠から三峰川沿いに北上。美和湖でひと休みして、高遠城跡を目指す。 ここは日本で有数の桜の名所なのだ。
GWだったらさすがに桜のピークはとっくに過ぎているだろうけど、 この付近は春が遅くて、道路の脇に桜が残っているのをしばしば見付けるので、もしかしたら、けっこう残っているかも知れないという期待があったのだけど…。 やっぱり、ほぼ完全に散ったあとだった。 (あとで調べたら、ピークは4月末ということである)。
高遠から西伊那線を南下。この道路は新山林道という名前で、 まだ完全に開通していないところがある。 途中、山が崩落している箇所があって怖かった。
(その横で弁当を食べていたのは誰だー!)。
新山林道から再び中沢峠、ここから、今度は南下する。
交通量が少なくて走りやすい。あまり曲がっていないのでけっこう飛ばせる。 グネグネ道を攻めるのもいいが、山の中を快走するのも気持がいい。
さらに地蔵峠を目指して走る。地蔵峠の手前に、看板があって、面白そうなことが書いてあったので、ゆっくり読もうと思って停止した。
そこは右カーブがけっこうきつい場所だったのだが、それと同時に道路自体右にかなり傾いていて、油断していたため、 立ちゴケしてしまった。
予想よりもかなり右に傾いた道路だったため、支え切れなかったし、 倒れたときの衝撃もかなり大きくなった。 恥ずかしいし…。
コカしたあとも、道路の傾斜のため、起こすのにけっこう難儀していると、 単車が助けに戻ってきてくれたりして、さらに恥ずかしかった。
いやほんと、起こしても、場所を移動しないとサイドスタンド立てられなかった。 まいるなー。Bandit 君にはけっこう傷がついてしまった…。
地蔵峠には地蔵があった。当り前やんけーと思われそうだが…。
地蔵峠から南はダートばっかりだった。蛇道林道、しらびそ峠、 ずっとずっとダートばっかり。
おれは砂利道は大好きなのだが、いったいどれだけ走れば終わりになるんだろう。 テクニカルな道でもないし、とにかく砂利道が続くだけだ。
だからと言って、油断すれば転倒することも充分考えられる。 転倒するのも楽しみと言えば楽しみだが、これから夕方にかかるところだし、車もほとんど走っていないし、転倒すればさらに時間を費やすので、 できれば転倒はしたくなかった。
道も合ってるんだか間違ってるんだかわからないというのもあったしね。
燃料にはあまり心配はなかったのだけどね。 (これが NSR だったらと思うとゾッとするよ、ほんと)。
なんとか舗装路までたどり着き、なんとか秋葉街道 (国道152) に出ることができた。 17時半を少し回ったところ。
上町 (っていうのは上村の中にある地名) から飯田市街に抜けるには、 赤石トンネル経由と矢筈トンネル経由の道がある。
前者は旧道で、後者は新道である。
当然、旧道を通って行くしかないやん、というわけで、旧道に入ったのだが、旧道にそれてしばらくしたところに看板があった。
「赤石トンネルを飯田側に抜けたところは崩落の危険性があるため、 通り抜けできません。通行止」
矢筈トンネルが開通すれば、赤石トンネルは廃道になる可能性が高いので、 ぜひこの機会に通っておきたいと思ったのに、通行止とは…。
しかし、赤石トンネルの向こう側が危険箇所とすれば、 トンネルの途中くらいまでは行けるかも知れない、と思って、 そのまま進んでみることにした。
赤石トンネルまでの道は車は1台も通っていなかった。 砂が浮いているので、コケる心配が高かったが、そんなこと気にしちゃいられない。
深い森の中をグネグネと走るこの道は最高だ。 でも、いくら走っても赤石トンネルに到着しないような気がした。 それだけ曲がりくねっている証拠だろう。
ようやく赤石トンネルが見えた……が、そこはバリケードで固く閉ざされていた。 トンネルには入れないが、ここまでの道はすごく楽しかった。
ここで引き返すしかないが、無駄足ではなかったよ!
旧道を上町まで戻って、新道を北上する。
きれいに整備された道は確かに便利であり、速度も速い。 しかし、旧道にくらべると、景色の美しさ、 情緒、道を走る楽しさ、どれもぜんぶ皆無に等しい。
全国でこのような工事がどんどん進んでいる。とても寂しく感じる。
新道は整備が急速に進んでいて、 矢筈トンネル付近は国道474号線という表示になっていた。 ここから飯田方面まで有料道路が開通するようだ。
矢筈トンネルもその一部なのだが、現時点では無料で開放されている。 確か三遠南信道路とかいう名称だったと思うのだが…。
矢筈トンネルを抜けると、有料道路は工事区間になり、一般道へ下ろされてしまう。 ここからは、道も狭く、交通量も多いため、まったく楽しめない。
飯田まではずっとこんな感じ。
前の車にくっついて、のろのろと飯田入り。ほんとつまんない。
今日の飯田の宿泊は、値段の割にはとてもいいホテルだ。地元でもけっこう有名みたいだった。
昨日、伊那での宿泊のときはメッチャ疲れていたので、あまりウロウロせずに眠ってしまったのだが、今日は睡眠不足もないので、飯田の町をウロウロすることにする。
飯田の繁華街は駅から細長く、メインストリート(?) 沿いに続いているため、 繁華街の散策もけっこう辛い。
今日は何を食べようかなーと考えながらうろうろするのだけど、おれは遠くに行くと和食を食べたくなる。
昨年の金沢ツーリングのときの盛り上がりを思いだしているうちに、寿司が食べたくなる。
メインストリートからちょっと裏道にはいったところにある寿司屋。 よし、今日はここで食べよう。
客はおれのほかには誰もいなかった。
おやじさん (といってもおれとあんまり歳はかわらないみたいだったけど…) は、 けっこう線が細くて、おかみさんの尻に敷かれている、っていう感じの人だった。
話しすればそれなりにノリがいいのだが、地元のこととかもあんまり知らないのだ。 逆に、おれが教えることの方が多かったりして… (汗)。
地酒の話をしても、飯田の地酒はあんまり好きじゃない、とか言っていたし…。
旅とか、そういうのを、あまり好きではない人なんだろう。
おかみさん (だんなよりやや年上かも知れない) のほうは、 地元のこととかよく知っていたし、旅とかそういうのも好きみたいだったので、話がはずむのだが、奥に入ってしまうことが多かった。
なんか、だんなが奥さんよぶとき「XXさーん」と呼んでいたような…。
あと、一品料理とかの形で、珍しいものとか食べたいのだが、ここは寿司しかなーい! にぎりしかなーい!
うーん。
でも、単品で握ってもらったのは、おいしかったよ。
客は、途中、何人か入れ替わりで何人か来たのだけど、いい客とは思えなかった。
金の払いはよいが、品がない。
飯田というところは、観光客が少ない町なんだなー、という気がした。
町はきれいなので、住むにはよいかも。