CREATE 2002/8/15

北岳〜第2日目(2002/8/10)


八本歯のコル

雪渓の休憩から約2時間。
そろそろ左足小指の骨折箇所の鬱血がピークに達してきました。
それと、骨折をかばうからでしょうか、右足と左足のかかとが靴ずれで痛いです。
また、右足の小指、骨折していない方の小指ですが、こっちも靴ずれみたい。
なんかボロボロです。
そろそろテーピングを巻き直さないとダメみたい。

いい休憩場所は見つからなかったけど、大きな石があって座れる場所で休憩。
風が強い中で、ゴミを飛ばされないようにしながらテーピングをする。
靴ずれの箇所にもテーピング。
テーピング持って来てれば、何かと役に立つ。
骨折の箇所は、血液を押し出すように強く巻く。
靴もしっかり履きなおして、これでラストスパートの準備OKだ。

テーピングをしなおして、足の調子が良くなって、マイペースで気分良く登って、ようやく八本歯のコルというところまで登ってきました。ここで休憩を取ります。
周囲はかなりガスが出てきて展望が悪くなってきています。
八本歯のコルの「コル」とは何でしょうか? わからないけど、気にしません。
ここから富士山の勇姿が見えました。どこから見ても美しいです。

ここら辺から、風が更に強くなってきて、めちゃくちゃ寒いです。
寒いのでウインドブレーカーを着ました。
これでもまだ寒いくらいですが、歩き始めたらちょうどいい塩梅です。

八本歯のコルで、9時半です。登山開始から4時間半が経過しています。
しかし、ここまで来たら気合で登頂できそうな気がしてきました。
ただ、時間が問題でしたね。
でも、ここまで来たら時間云々ではなく、登るしかないでしょう。


次第にガスがかかり、展望が悪くなる


間の岳(のはず)方向


八本歯のコルから富士山が見えた!


北岳


北岳


間の岳(のはず)方向

八本歯のコルから、かなり登ったところに、朽ちかけの木の看板があった。
ここが吊尾根分岐というのかな。ここで小休憩。
この看板に「標高約3100m」と書いてあった。
北岳は高さが 3192m だから、あと 100m を切っているということだ。
なんだか、これを見て急に元気になってきた。
ヤマペンが来たので「ヤマペン、3100mやて! あと100mもないで!」と言ったら、ヤマペンも喜んでいたみたい。
問題は時間である。
現在11時ちょっと前。
12時くらいには着くかなという感じ。
ヤマペンは「12時を少しでも回ったら引き返す!」と言っているが、おれは「ここまで来たら登るしかないでしょ」と言った。


吊尾根分岐 約3100m


さらにガスがかかってきた


頂上に近くなってきた
後ろを振り返って撮影


あれが頂上か?


頂上

頂上が近づいてくると疲れを忘れるものだ。
いよいよという感覚を持ちつつ、登ってゆく。
頂上が目前に迫ったとき、聞き覚えのある声が上から聞こえた。

センセイだった。
ずいぶん先を行っていたはずなのに、今まで待ってくれていたようだ。
本当に嬉しかった。

ヤマペンとおれが最後のゴール。
他の3人が頂上で待っていて迎えてくれる。
時刻は11時半だった。

先頭のセンセイは9時前にはもう登頂していたそうだ。
速すぎるよ〜。
この風の強い寒い中を2時間半も待っていてくれたらしい。
2番手のもったには10時半登頂、3番手和尚は聞いてません。
そしてラストのヤマペンとおれが11時半。

頂上はガスがかかり、展望が全くなかった。
崖から下を覗き込むと、怖いほどの絶壁。
飛び込みたい衝動に駆られる。
もし自殺志願者がいたら、ここを教えてやろう。…登頂後は自殺願望なんてなくなっていることだろう。

展望がないのが残念だが、それ以上に充足感の方が大きい。
晴れてたら富士山も見えてたんだろうなぁ〜。

朝買ってきたパンを食べる。気圧が低いから、袋がパンパンに膨れている。
山頂で食べるパンはうまい。


北岳頂上
3192m


北岳頂上の賑わい


北岳頂上〜ガスで展望ナッシング!


下山

しばらく山頂で食べたり飲んだりしゃべったりして、下山を開始する。
12時前くらいかな。

下山は、登山とは逆の方向に下りる。


下山コース


肩の小屋

相変わらず、他の3人は速い。
あっという間に先に行ってしまって見えなくなった。

おれとヤマペンがマイペースで最後から下りる。
肩の小屋でしばし休憩。

下山なんて、楽チン楽チン(死語?)と思っていたが、ここの下山はあまり楽ではない。足を痛めているからというのもあるのかな。

更に下山。
ときどきヤマペンと休憩を一緒にしていたが、おれの方が休憩を取る回数が少ないので、次第にヤマペンと会わなくなってきた。

分岐点のところまで下りてきた。
まっすぐ行けば「大樺沢」、曲がってゆけば「御池・広河原」と書いてある。
どっちに行こうかな〜。
近くにいた人に聞いたら、「どっちも広河原に行くよ。こっち(大樺沢)に行けば沢伝いに下りてゆく道、こっち(御池)に行けば御池小屋から広河原。こっち(御池)の方が近いのは近いね」と教えてもらった。

そのうち、ヤマペンが下りてくるのが見えたので、ヤマペンと相談して、近い方がいいねと、広河原と書いてある道、御池小屋経由の道を進むことにした。

分岐後も、相変わらずおれの方が休憩の回数が少なく、この道は休憩するポイントが少ないため、おれはほとんど休憩なしでどんどん進む。
結局、分岐以後、下山までヤマペンに会うことはなかった。

この道は森林コースのため、展望がなく、面白味がない。
しかも、大石ゴロゴロで、歩きにくいことこの上ない。
すぐにすべるので、スピードを上げにくい。
大きな段差が多いため、細かい幅で歩くことができず、ヒザに負担がかかる。
いままでは下山でヒザに負担がかかるなどということは思ったことがなかったのに、今回はとても負担に思う。

苦労して下っていると、テントサイトが見えてきた。
あれが広河原なのか?
でも、なんかやや近い気がする。
地図を持っていなかったため、御池小屋の存在を知らなかったので、でも広河原の近くまで来ているのかなという期待はあった。
だって、もうずいぶん歩いてきたからねえ。

とりあえず、人が居るところまで早く下りたくなって、やや急いで御池小屋の方に向かっていった。
ここに到着してみて初めて、ここが、おれたちが当初泊まる予定の小屋だったんだなと気づいた。
御池小屋で、広河原まで下りるのにどれくらいかかりますかと聞いてみたら、1時間から2時間かかるよ、と言われ、ちょっと気が遠くなってきた。

どっちにしても下りないといけないことは確かなので、進んで行く。
ああ、もう厭だ〜。

こっちの御池コースって、人がほとんど歩いていない。
なんか不安だし。
ときどきすれ違う人に、このまま進めば広河原に下りられることを確認しながら進む。
なんか、このまま間違って進んで、わけのわからないところに出てしまい、戻るには登らないといけない、なんていう状況になったら、それこそ大変だ。遭難してしまうかも知れないもんね。昼間の装備はあるけれど、夜になったら装備不足と思うから。

まあ、でも広河原には徐々にではあるが近づきつつあるみたいだし、このまま我慢して進んでいくしかない。
今朝、広河原から甲府方面に行くためのバスの時刻表を見てきたのだが、最終バスが 16:30 で、その前が 16:00 だった。
下山する前は、最終に間に合わせるとかそういうレベルのことは考えておらず、広河原からみんな同じバスに乗れるかな、とかそういうことだったのに、今は最終バスのことが気にかかり始めている。

一番速い人は、14時くらいには下山してしまっているのかなあ。
おれとヤマペンは分岐点から御池コースを下ったが、他の3人はどっちを下ったんだろう。
ああ、あのとき御池コースではなく、大樺沢コースを選択しておいたほうが良かったなあ。
あるいは、来た道を逆向きに戻ったほうが良かったなあ。
そんなマイナスのことばかり考えた。

足の状態も最悪だ。ヒザがガクガクだし、持病のヒザ痛が出てくるし、それをかばうために、その逆のヒザも痛みがひどい。筋肉の疲労もかなりのものだし、指先の靴ずれもひどい。

何度も何度も、「今度こそ、本当に広河原が近くなってきた」と期待し、それが裏切られた。
いくら経っても広河原には着けないんじゃないかという気がしてくる。

しかし、ようやく本当に広河原が近づいてきたと実感できたときがあったのだが、焦って道を間違える始末だ。

そうして、ようやく、広河原山荘のところに戻って来ることができた。
16時10分だった。
最終バスの出る20分前だ。

誰か居ないか、いろいろ探し回ったり、伝言がないか確認したりしたが、誰も見つからなかった。
今夜の宿泊は、ここからバスで1時間ほど下った、南アルプス温泉の北岳荘なので、近いから先に行ってしまったのかな、と思う。
北岳荘に電話をしてみたところ、おれたちのグループのうちの誰もまだ到着していないということだった。
もうバスの出発の時間がないので、どうするか決めないといけない。

ヤマペンは30分から60分くらいおれより遅れているのではないかと予想されるので、バスには間に合わない。
待っていて一緒にタクシーで行くという選択肢もあるが、昨日の経験からすると、行けるところはさっさと行ってしまう方が問題が少ないと思う。

バスの出発まで2分くらいになって決断。おれだけでもバスに乗って下りておこう。
で、バス停に向かったところ、見覚えのある人がそこにうなだれて座っていた。
もったにだった。
死にそうな表情で座っていた。
彼が代表して、おれとヤマペンを待っていてくれたのかな、と思ったが、どうやらそうではなさそう。
もったにとおれは、先にバスで下ることになった。

もったにの話しによると、彼が下りてきたのは16時頃だったらしい。
おれとヤマペンだけが遅かったわけではなさそうだ。

北岳荘に到着したら、先生と和尚がくつろいでいた。
彼らも、下りにはかなりてこずったのだと言う。
おれが下りてきたのと、みんな大差ない時刻に下りているみたいだった。
聞いたところ、おれとヤマペン以外の3人は、途中の分岐点から大樺沢の方に出て、そっちを下りてきたらしい。でも、てこずるのはどっちも同じだったみたい。

あとはヤマペンだけ。

そろそろ夕食の時間なんだけど、宿の人に事情を話し、ヤマペンが到着するまで夕食を待って欲しいと頼んだ。
風呂にも入らずに待っていた。
どれくらいになったら戻って来るかなあ。

そんな時、ひょっこりヤマペンが戻ってきた。
思ったよりもぜんぜん早かったので、なんだか拍子抜けしてしまった。
最終バスに10分ほど間に合わなかったそうである。
結局タクシーで戻ってきたみたい。(かなり金がかかったよう)。

というわけで、その後、無事に風呂と食事タイム。
今回の山行はトラブルが多かったので、その話しで盛り上がる。

もし、1日目、ヤマペンの車が故障していなければ、登りは御池ルートからになっていただろう。しかし、御池ルートを下ってきて思うのは、登りがそこじゃなくてホントに良かったということ。

食事のあとに散歩に行こうと誘っても、みんな寝たふり(笑)。
おれと先生だけで散歩。
星がめちゃきれいだった。
星ってこんなにいっぱいあったっけ?ていう感じ。

疲れているので眠りにつくの早し。

続く…